マッチングアプリで会った規格外の大男に、前戯も会話もなく肉便器にされた話
受け専七年の自負があった俺が、アプリで会った規格外の大男にホテルで前戯も会話もなく喉と尻を壊された。腹の奥で中出しに二度イかされ、注がれたまま床に放置され、名前も知らないまま「もういいよ」と捨てられた夜の、惨めで空っぽな記録。
先に書いておく。あの夜、俺は会話をしなかった。されもしなかった。名前も交わさなかったし、最後まで知らされなかった。ただ尻と喉だけを使われて、中に出されたまま床に放置されて、男が服を着終わる前に「もういいよ」と顎で示された。それだけだ。一晩で、俺の体は別の規格に作り変えられて、心のほうは何ひとつ満たされなかった。これは、そういう夜の記録だ。
受け専を七年やってきた。場数は踏んだほうだと思っていたし、自分の体のことは自分が一番わかっているつもりだった。どのくらいで馴染むか、どこを擦られると腰が抜けるか、どの角度なら奥まで楽に呑めるか、どこまでなら入るか。全部、データとして持っているつもりだった。経験者の余裕、というやつだ。初めての相手でも、最初の数分で「ああ、この人はこういうタイプか」と当たりをつけて、自分のほうが一枚上手のつもりで体を開いてやる。そういう冷めた優越感が、たしかに俺の中にあった。そのデータが、その優越感が、たった一晩で、まるごと役に立たないゴミに書き換えられた話を、忘れないうちに書いておく。
アプリのプロフィールは写真が一枚と、身長と、一行だけ。「即。ゴチャゴチャ言う奴は無理」。文字の感じが冷たくて、だから選んだ。優しくされたい気分じゃなかった。前の月にちょっとした失恋めいたことがあって、人として丁寧に扱われるのに疲れていた。気遣われたくなかった。名前を呼ばれたくも、目を見て話されたくもなかった。処理されたかった。ただの穴になりたかった、と言ってしまえば、たぶんそれが一番正確だ。だから「ゴチャゴチャ言う奴は無理」の一行に、むしろ安心した。こいつは俺を人間扱いしない。それでいい。
待ち合わせは駅前のロータリーじゃなく、ホテルの部屋番号だけが送られてきた。前後の挨拶もない。ただ番号だけ。エレベーターを上がりながら、まだ余裕があった。どうせいつもの夜になる、こっちが上手にいなしてやる、と思っていた。ドアをノックして、開いて、その余裕は最初の三秒で消えた。
部屋の奥に立っていた男は、ドア枠に頭が触れそうだった。肩幅で、入口の光が半分塞がる。Tシャツの腕が、布を内側から押し返して張り詰めていて、胸板の厚みで首から下の輪郭が壁みたいに見えた。プロフィールの身長は嘘じゃなかった、むしろ控えめに書いてあった。俺は百七十そこそこで、相手を見上げる角度に、まず首が驚いた。物理的に、こっちの視界が相手で埋まる。それだけで、もう、いつもの夜じゃないと体が察した。
部屋に入った瞬間、匂いに気づいた。風呂上がりの石鹸の、清潔で淡い匂い。それと、その下にうっすら混じる、男の体そのものの体温みたいな匂い。まだ汗の匂いじゃない。この匂いが何に変わっていくのか、このときの俺はまだ知らなかった。
「靴脱いだら、そこに四つん這い」
挨拶はそれだけだった。名前も訊かれない。俺がどういう人間かも、今日が初めてかどうかも、何も。声には抑揚がほとんどなくて、注文を読み上げる店員みたいだった。男はベッドの縁に腰を下ろして、無造作にジーンズの前を寛げた。出てきたものを見て、俺の喉の奥が、ひゅっ、と鳴った。
太い。長さより、まず太さだった。握ったら指が回りきらない、というのが比喩じゃなく、事実として目の前にあった。根元に向かってさらに膨らんでいて、幹に浮いた血管の太さまでが規格外だった。まだ完全に立ちきってもいないのに、自重で重たげに頭をもたげている。先端の張りはまだ鈍くて、これがいきり立ったらどうなるのか、想像が追いつかない。俺の手首と並べても、たぶん負ける。受け専七年で見てきたどれとも、桁が違った。「これ、入んのか」と、考えるより先に口から漏れた。
「入れんだよ。お前が入る側じゃねえだろ」
低い声で、しかも徹底して無関心な声で言われた。怒鳴られたほうが、まだ人間扱いだったと思う。男にとって俺は、今夜使う道具で、それ以上でも以下でもないのが、声の温度でわかった。背筋を、冷たいものがするりと駆け上がった。情けないことに、その温度に、俺の体は反応していた。まだ何も触られていないのに、もう、下腹のあたりが重く疼き始めていて、自分のものが、布の中で勝手に頭をもたげているのが、自分でわかった。
四つん這いになった俺の後頭部を、男は無造作に掴んで、自分の股間へ引き寄せた。前戯はなかった。本当に、何ひとつなかった。撫でも、口づけも、慣らしの言葉も。唇に、熱くて、思ったより張りのある先端が当たった。鼻先が根元の茂みに触れて、近づいた距離のぶんだけ、さっきの石鹸の匂いの奥から、もっと濃い、雄の匂いが立ち上ってくる。蒸れた熱と、皮膚の匂いと、先端からじわりと滲み出した塩気。開けと言われる前に、後頭部をぐっと押された。
入りきらなかった。半分も呑めないところで、亀頭の張り出したところが喉の入口につかえて、俺は反射でえずいた。おぐっ、と喉が鳴って、涙が一気に滲んで、目の奥がチカチカ白く弾けた。それでも男は加減しなかった。「歯、当てんな」とだけ言って、俺の頭を前後に動かす。俺は道具だから、自分のペースなんてものは最初から許されていない。喉の浅いところで張り出したカリが擦れて、ぐぽ、ぐぽ、と詰まった水音が鼻に抜ける。口の端から唾液が押し出されて糸を引いて、顎を伝って、床に落ちた。ぼと、ぼと、と垂れる音が、やけに大きく聞こえた。
口の中で、それはまだ膨らんでいた。俺が呑まされている最中にも、舌に乗った幹が、どく、どく、と脈打って、一回り、また一回りと太さを増していく。喉につかえる位置が、さっきより手前にずれた。立ちきったらこんなに、と気づいて、ぞくりとした。息ができない。鼻で必死に空気を探すたびに、汗と、青臭い雄の匂いと、先走りの塩気が、口の中いっぱいに広がって、頭の芯がぼうっと白く濁ってくる。苦しい。確かに苦しいのに、その苦しさの底のほうで、俺の前は痛いくらいに張り詰めて、先端から透明なものがとろりと漏れて、内ももを伝っていた。情けない。誰にも触られていないのに、ただ喉を作業のように使われているだけなのに、体が勝手に悦んでいる。受け専の自負なんてものが、唾液と一緒に床にぼたぼた垂れていく感じがした。
男は俺の喉の奥に何度か先端を押しつけ、つかえる感触を確かめるように使ってから、ふっと興味を失ったように頭を放した。ずぽっ、と抜けて、酸素が肺に流れ込んだ瞬間、俺は大きく咳き込んだ。よだれと、男の先走りで、口の周りはぐしゃぐしゃに濡れて、糸が顎から胸元まで垂れていた。「尻、上げろ」。それだけ。俺がどれだけ涙目で喘いでいようが、男は一瞥もくれなかった。労りも、確認も、ない。次の工程に進むだけ。
ローションを、男は乱暴なくらいたっぷりと使った。優しさじゃない。入れるための、ただの段取りだった。キャップを開ける、かちっ、という音のあとに、冷たい液体を尻の谷にだらりとぶちまけて、それが会陰のほうまで垂れていく。太い指を二本、いきなり根元まで押し込んでくる。「ま、待っ」と言いかけて、その先を言わせてもらえなかった。指は俺の中をかき回すというより、これから入る本体のために、ただ通り道を均しているだけだった。前立腺なんて狙いもしない。コリッとした場所を、わざと避けて、指の腹で素通りしていく。気持ちよくさせる気が、最初から、ない。それがかえって、俺の奥を、勝手にきゅうきゅう疼かせた。
馴染ませる時間なんてものは、与えられなかった。指が、ずる、と二本まとめて抜かれて、その喪失感に腰が浮いた瞬間、代わりにあの規格外の先端が、ローションでぬめる入口に押し当てられた。「ひっ」と、自分でも知らない高さの声が出た。亀頭のいちばん張り出したところが、ぐ、と窄まりに食い込んで、俺の体は完全に停止した。入らない。物理的に、これは入らない、と全身が叫んでいる。括約筋が反射で拒絶して、男の先端を必死に押し返そうとする。
それでも男は、ゆっくりと、しかし一切ためらわず、体重をかけてきた。みち、みち、と、自分の体の縁が限界まで引き伸ばされる感覚があって、薄い皮膚が裂けるんじゃないかと思うほど突っ張って、一番太いところが、ぬぐ、と割り込んできた瞬間、俺は声も出せずに、口を開けたまま固まった。下腹の奥を、内側から拳でぐうっと押し上げられるような圧迫感。便意とも違う、内臓そのものを別の形に作り変えられていくような、鈍く重い異物感。冷や汗が背中を伝った。「嘘だろ」と頭の隅で思った。「これで、まだ半分も入ってない」。
「狭ェな。締めんな」
男の声に、ようやくほんの少しだけ熱がこもった。俺の体を、人としてではなく、ただの締まり具合として評価する声。それがまた、ぞくりと来た。腰を進めるたびに、俺の中の、知りもしなかった場所が、こじ開けられて、押し広げられて、上書きされていく。亀頭で止まっていたものが、括約筋の輪を割って、直腸の最初の曲がり角を無理やりまっすぐに伸ばして、それでも、まだ奥へ。みしり、と内側の何かがしなる感覚があって、「あ、あ、無理、そこは、それ以上は」と俺は切れ切れに喘いだけれど、男は止まらなかった。止まる理由が、男の側に、一つもなかった。
ずぷ、ずぷり、と、自分の体の限界の目盛りが一段ずつ更新されていく。さっきの曲がり角を越えたところで、また一段。届いたことのない深さに先端が突き当たって、内臓の壁を内側からぐうっと押された瞬間、目の前が真っ白に弾けた。前を一度も触られていないのに、俺の性器は、何も吐き出さないまま、びくっ、びくっ、と痙攣だけを繰り返して、先端からとろとろと透明なものを垂らしていた。中だけで、達してしまっていた。腹の奥でイく、という感覚を、俺はこの夜、初めて知った。七年やってきて、こんな壊れ方は、データのどこにもなかった。
「もう一回イったか。締まりでわかんだよ」
男は、それを面白がりもしなかった。ただ事実として読み取って、口にした。俺が中だけで気をやったことを、こいつは締め付けの強さで把握している。その観察の冷たさが、何より恥ずかしくて、何よりこたえた。
そこからは、もう、文章にならない。
男は俺の腰骨を両手でがっちり掴んで、規格外の一本で、奥を、まっすぐ、何度も突いた。引くたびに、ずるるっ、と内臓まで一緒に引きずり出されそうになって、入れるたびに、胃の裏側まで届くんじゃないかと思った。肌のぶつかる打音が、ぱぁん、ぱぁん、と部屋に響いて、そのあいだに、繋がった場所から、ぐちゅり、じゅぷ、とローションと先走りの泡立つ音が漏れる。俺の喘ぎが切れ切れに混じる。「ひ、っ、あ、あぐ」。言葉が、もう、組み立てられない。主語も述語も溶けて、ただの音だけが喉から漏れていく。
部屋の匂いが、もう、さっきの石鹸じゃなかった。二人ぶんの汗と、立ち上る体温と、肛口から漏れる粘った匂いと、雄の獣じみた匂いが、空気そのものを重くしていた。清潔だったはずの男の体から、今は、俺を犯しているケダモノの匂いしかしない。その匂いを吸い込むたびに、頭の芯がまた一段、蕩けた。
途中で男が「肉便器が」と、感情のない声で言った。罵倒ですらない、ただの事実確認みたいに。俺は、その言葉に、こくこくと頷いていた。違う、と言えなかった。言いたくもなかった。今この瞬間、俺は確かに便器で、それ以外の何でもなくて、そう呼ばれることに、体が、悦んでいた。下腹の奥が、その三文字を浴びるたびに、きゅうっ、と勝手に締まる。「べ、んき……」と、自分の口が、勝手にその言葉を、なぞっていた。誰に言わされたわけでもない。俺自身が、繋がった奥の悦びのままに、自分をそう呼んでいた。名前なんて要らない。会話なんて要らない。ただ、使われていたかった。注ぎ口になりたかった。
奥を抉られるたびに、視界の端がチカチカ明滅して、口からは意味のない音しか出ない。よだれが顎を伝って、シーツに小さな染みを作る。汗が背中を一筋流れて、繋がった場所のほうへ落ちていく。受け専の知識も、蓄えたデータも、一枚上手のつもりだったプライドも、全部この一本に内側から押し潰されて、形をなくしていく。俺はもう、ただ揺さぶられて鳴くだけの、温い肉の塊だった。突き上げられるたびに、自分の前から、触ってもいないのに、透明なものがぽたぽたとシーツに垂れて、糸を引いていた。
男の腰の動きが、不意に、速く、浅くなった。これは知っている。これだけは、七年分のデータが、まだ生きている。男が、俺の中で、果てようとしている。「出すぞ」とも言わなかった。一番奥に、ぐっ、と突き入れたまま、低く唸って、根元が一回り膨らんで、男は俺の中に、たっぷりと放った。どぷっ、と熱いものが腹の奥でぶわっと広がって、それが脈打つたびに、どく、どく、と二度三度、奥を内側から叩いていくのが、はっきりとわかった。粘膜越しに伝わる、その体温の高さ。注がれている、という生々しい実感。それだけで、俺はもう一度、何も出さないまま、達した。びくびくと内側だけで痙攣しながら、目の奥が白く焼き切れて、よだれを垂らした口から「あ、ぁ……」と、声にならない声が漏れた。ああ、注がれてる、と、頭の芯が溶けて流れていくのを感じた。
男はそのまま、出し切るように、二度三度、奥で腰を小さく揺すった。最後の一滴まで、俺の中に擦りつけるみたいに。掻き混ぜられて、ぬちゃ、ぐちゅ、と粘った音が、繋がった場所から漏れる。俺はそれを、ただ受け止めることしかできなかった。口の端からよだれを垂らしたまま、与えられた熱を、腹の奥に溜めていく注ぎ口として。
放たれた熱の余韻に浸る暇は、一秒も与えられなかった。
男は、出し終わると、何の名残もなく、ずるりと、抜いた。栓を引き抜かれた感覚。さっきまで内臓を作り変えていた質量が、ぽっかりと消えて、押し広げられたまま閉じきれない奥から、注がれたものが、とろ、とろ、と垂れ始める。たぷん、と腹の奥に溜まっていた感触が、傾いた拍子に内ももへ流れ落ちる。拭いてもくれない。労ってもくれない。俺が床に崩れ落ちたまま、はあ、はあ、と荒い息をついて、まだ閉じきれない奥をひくつかせて震えているのを、男はもう、見てすらいなかった。
シャワーの音が聞こえて、しばらくして、さっぱりした顔で、服を着た男が戻ってきた。石鹸の匂いだけになって。鏡を一度覗いて前髪を直すような、何でもない仕草で。そして俺を一瞥して、顎で示した。「もういいよ」。それだけ。タクシー代を、と財布から数枚抜いて、ベッドの上に、ぱさっ、と放った。「鍵、置いといて」と言って、男は先に部屋を出ていった。ドアが閉まる、かちゃ、という音が、やけに静かだった。
俺は、しばらく動けなかった。床に頬をつけたまま、自分の荒い呼吸の音だけを聞いていた。さっきまでの打音も水音も、男の匂いも、ぜんぶ引いていって、あとには冷えていくシーツと、自分の体温だけが残った。中に出されたものが、太ももの内側を、つう、と伝って、床に落ちていく。それを拭くために、よろよろと立ち上がって、内股のまま、トイレに駆け込んで、便座に座って、自分でいきんで掻き出した。ぼと、ぼと、と落ちる音を聞きながら、ふと、笑いそうになった。便器の中で、便器みたいに、自分の中身を絞り出している。これ以上ないくらい、お似合いだと思った。掻き出しても掻き出しても、奥のほうに、まだあの男の熱と、押し広げられた感覚の残骸が、鈍く居座っている気がした。
名前も、知らない。年も、職業も、声の本当のトーンも、何も。あの男にとって俺は今夜限りの穴で、明日には顔も忘れているだろう。俺にとっても、本来そうであるはずだった。処理されたかった。ただの穴になりたかった。望み通りになったはずだった。完璧に、注文通りの夜だった。
なのに、ホテルを出て、夜の街の灯りの下を歩きながら、俺の中には、満たされたという感覚が、一つもなかった。腹の奥には、まだあの圧迫感の残骸みたいなものが、鈍く重く居座っていて、歩くたびに、にぶく存在を主張してくる。それなのに、心のほうは、からっぽだった。誰かに抱かれたあとの、いつものあの温かい疲れも、ちょっとした後悔も、何もない。ただ、風が吹き抜けるみたいな空洞だけがあった。体だけがぱんぱんに使われて、心には何も注がれなかった。
七年で積み上げたデータは、もう役に立たない。あの規格外を一度知ってしまった体は、たぶん、これから先、普通のものでは満たされなくなる。それは、わかる。理屈では、わかる。わかるのに、俺は、今夜のことを、誰かに恋しく思い出すことすら、できないんだろう。名前を知らないから。会話をしなかったから。あの男は、俺のことを、最後まで一度も、人間として見なかったから。思い出そうにも、そこには顔のない壁と、無関心な声と、規格外の質量と、腹の奥に焼きついた熱しか、残っていない。
財布の中の、あのタクシー代だけが、今夜の俺の値段だった。数えてもいない、何枚かの紙。それを使う気にもなれなくて、俺はただ、終電の駅へ向かって、ぱんぱんに重い体を引きずって歩いた。一歩ごとに、奥に居座った異物感が、まだあるぞ、と囁いてくる。改札の灯りが、やけに白く目に刺さった。何も、回収されないまま。明日になれば、また普通の顔をして会社に行くんだろう。腹の奥にだけ、あの夜の規格を、誰にも言えないまま、抱えて。