深夜の屋内プールで、コースロープを越えてきた男と...

閉館前、ほぼ無人になる深夜の屋内プール。週3で通う俺の隣のコースに、その夜だけ20代後半の体格のいい男が一人。蛍光灯の青い光の下、コースの端で何度か目が合ったあと、男は無言でコースロープを越えてきた。水中で密着し、青いタイルの照り返しの中で互いの体温と硬さを確かめ合った一夜を綴る、深夜ジムプールの一期一会体験談。

深夜の屋内プールで、コースロープを越えてきた男と...

週に三度、深夜のプールだけを求めて通うスポーツジムがある。

閉館の一時間前を過ぎると、照明が少し落ち、六つのコースはほとんど無人になる。水の音と自分の息遣いだけが空間を支配する。残業で疲れた体を、冷たい水に沈めて溶かしていく――それが、俺の唯一の癒しだった。

その夜は、いつもと違った。

プールサイドに降り立った瞬間、六コースのうちの一つに人影があった。隣のコース、ちょうど俺がいつも使うすぐ横。

男だった。二十代後半か、三十代前半か。水中でもはっきりわかるほど、背が高く、肩幅が広く、鍛え抜かれた体躯。ストロークのたびに、水面下で肩甲骨と広背筋が力強く波打ち、背中のラインが蛍光灯の青白い光を反射して艶めかしく浮かび上がる。黒い競泳水着が、引き締まった腰と尻の形をくっきりと浮き彫りにしていた。

俺は一瞬、息を飲んだ。
でも、気にしないようにして、自分のコースに滑り込んだ。


三十分ほど、黙々と泳いだ。
コースを往復し、ターンし、また戻る。体が熱くなり、水の冷たさが心地よく肌を刺す。
やがて息が上がってきたので、コース端の壁に手をかけて休憩した。水面に顔を上げ、ゴーグルを外す。

すると、隣のコースの端にも、同じように男が止まっていた。

ゴーグルを頭に上げた顔が、はっきりと見えた。
端正で整った顔立ち。白い肌が水に濡れて艶やかに光り、濡れた前髪が額に張り付いている。長い睫毛の下の瞳は、黒く澄んでいて、どこか獣のような鋭さがあった。

目が合った。
一瞬だけ。
お互いに、すぐに逸らした。

また泳ぎ始めた。
でも、今度は意識せざるを得なかった。
水をかくたびに、隣の男のストロークが俺の耳に響く。力強く、でも無駄のない動き。
再び端で止まったとき、男はもうこちらを向いていた。

目が、合った。
今度は、逸らさなかった。

水の音だけが響く。プール特有の反響音。蛍光灯の光が水面に揺らめき、青い光の粒が二人の体を包む。
男が、ゆっくりとコースロープに手をかけた。
ロープが水を押し分け、静かに沈む。

男が、俺のコースに入ってきた。

俺は動かなかった。
足が底に着く浅いエリア。肩まで水が来る深さ。
男が近づくにつれ、水が波打ち、俺の腹や胸に柔らかくぶつかる。
距離が縮まる。
一メートル。五十センチ。三十センチ。

顔が、すぐそこにあった。
息が混じり合いそうな距離。

「……ここ、使っていいですか」
低い、掠れた声。プールの反響に溶けても、はっきりと鼓膜に届いた。

「……どうぞ」
俺の声も、わずかに震えていた。

男は俺のすぐ隣に立った。
肩と肩が、五センチもない距離。
水の中で、二人の体温が微かに伝わる。

「よくここに来るんですか」
「週に三回くらい」
「俺も同じくらい。でも、会ったことなかったですね」
少しの沈黙。
「今日、遅くていつもより空いてますね」
「……あと三十分で閉館だから」

男が、ゆっくりと俺の方を向いた。
水に濡れた唇。瞳の奥に、蛍光灯の反射が小さく揺れている。
プールの底の青いタイルが、二人の下半身を淡く照らしていた。

「……何か、しましょうか」
低く、静かな、でもはっきりとした問い。
誘うような甘さはなかった。ただ、確認するような、互いの欲を試すような一言だった。

俺は男の目を見つめたまま、ゆっくりと息を吐いた。
「嫌じゃないなら」
「嫌じゃないから、聞いた」

それだけで、境界が溶けた。

男の手が、水の中で俺の腰に触れた。
冷たい水と、熱い掌の温度差が、電流のように背筋を駆け上がる。
指先が腰骨をなぞり、ゆっくりと探るように動く。
俺も、男の逞しい上腕に手を置いた。
水中では抵抗がある。その抵抗が、すべての動きを遅く、濃密に、淫らに変える。

「……声、立てないでください。スタッフが巡回に来るかもしれない」
男の唇が、俺の耳元で囁いた。息が水面に触れて小さな泡になる。
「わかってる」

男の指が、水着のウエストラインに沿って滑り込んだ。
布の内側へ。
冷たい水の中で、その指だけが熱く、俺の素肌を直接焼くように触れる。
ゆっくりと、陰毛を掻き分け、根元を包み込む。
既に俺の性器は、硬く張りつめていた。

「っ……」
喉の奥で息を殺す。
水の中で音が反響する。絶対に声を出してはいけない。

男の指が、完全に俺のものを握り込んだ。
柔らかく、でも確実に。
水の抵抗を受けながら、根元から先端までを、丁寧に、まるで味わうように往復させる。
親指が裏筋をゆっくりと押すたび、俺の腰が水中ですくんと浮く。

「感じてますか」
耳元で、ほとんど息だけの声。
「……感じてる。すごく」
「水の中は、感覚が違うでしょう?」
男の指が、さらに深く包み込み、ゆっくりと扱きながら訊ねる。
「……水が、全部を包んで……触れる場所が広がるみたいで……」

「そうか」
男は俺の言葉を確かめるように、指の動きを少し大胆にした。
中指と薬指で根元を締め、親指で先端の敏感な部分を円を描くように刺激する。
水の冷たさと、指の熱さと、抵抗が混ざり合い、普段の陸上では味わえない、ねっとりとした快感が全身に広がっていく。

俺の性器は、もう限界まで硬くなり、先走りが水の中に溶け出していた。
男はそれを指で感じ取り、嬉しそうに息を漏らした。

「ここ……弱いんですね」
親指が、裏筋の特に敏感な一点を、執拗に押す。
俺の腰が、勝手に水中をくねる。
「っ……あ……」
声が漏れそうになるのを、必死に飲み込む。

「スタッフが来るまで、あと十五分くらい」
男の声が、少しだけ荒くなっていた。
「このままイかせるか……外で続きをするか」

俺は男の瞳を見つめ、震える声で答えた。
「……外で、続きを」


プールから上がり、別々に更衣室へ向かった。
平日の深夜。更衣室は無人だった。
男が少し遅れて入ってきて、俺の隣のロッカーの前に立った。

タオルで体を拭くふりをしながら、ほとんど言葉は交わさなかった。
でも、互いの視線が絡み合う。
水着を脱ぐと、男の性器が既に完全に勃起して、太く長く、血管を浮かせて脈打っていた。
俺も、同じだった。

男が、俺の前に立った。
そのまま、後ろに回り込む。
後ろから腕が回され、素肌同士が密着する。
水の中とは違う。体温が、直接、熱く伝わる。

男の胸板が俺の背中にぴったりと張り付き、硬い乳首が肌に擦れる。
腹から下へ、熱い掌が滑り落ち、俺の性器を鷲掴みにした。
今度は水の抵抗がない。
動きが、素直に、激しく、俺の神経を直撃する。

「っ……!」
ロッカーに手をついて体を支える。
男の手が、容赦なく、でも丁寧に扱き始める。
根元を強く握り、先端を親指で捏ね回し、裏筋を何度も往復。
先走りが溢れ、男の手をぬるぬると滑らせる。

「声、出さないで」
男が俺の耳に唇を寄せ、熱い息を吹きかける。
「でも……感じてる顔、すごくエロい」

男のもう片方の手が、俺の胸を撫で、乳首を摘まんで転がす。
腰を軽く押し付けてくる。男の硬くなった性器が、俺の尻の谷間にぴったりと嵌まり、熱く脈打っていた。

「もう……出そう?」
「……ああ……」
「いいよ。俺の手の中に、全部出して」

俺は声を殺したまま、腰を激しく震わせて射精した。
熱い精液が、勢いよく男の手の中に飛び散る。
何度も、何度も。
男は手を止めず、最後の一滴まで搾り取るように扱き続けた。


息を整える間もなく、男が俺の肩を掴んで向き直させた。
「俺も……我慢できない」

俺は床に膝をついた。
冷たいタイルが膝に当たる。
目の前に、男の逞しい性器が、怒張して反り返っていた。
先端からは透明な液が糸を引いている。

俺は両手で根元を掴み、ゆっくりと唇を開いた。
熱く、硬く、脈打つそれを、舌で先端を舐め上げ、ゆっくりと口内に含んだ。
男の腰がビクンと震えた。
「っ……」
男は壁に手をつき、声を殺す。

俺は喉の奥まで受け入れ、舌を絡めながら、頭を前後に動かした。
水の中で味わった遅い動きとは違う。
今は、もっと激しく、もっと淫らに。
唾液と先走りが混ざり、ぬちゃぬちゃと湿った音が更衣室に響く。

男の手が俺の頭に伸び、髪を掴む。
でも、優しく押す程度。
俺はさらに深く咥え、喉で締め付けながら、根元までくわえ込んだ。

「……もう……出る」
男の声が、掠れて震える。

俺は顔を離さず、全部を受け止めた。
熱く、大量の精液が喉の奥に飛び散る。
男の体が、長く、激しく痙攣した。


二人とも、息を荒げながら体を拭き、着替えた。
ロッカーを閉め、出口に向かう。
男が、ふと立ち止まった。

「名前……聞いていい?」
「……聞かない方がいいと思う」
「そうだな」
少し間を置いて、男が微笑んだ。
「でも、同じ時間に来ることは……ある?」
「週三で来てる」
「俺も」

出口で、別れた。
方向が違う。

次の週、同じ曜日。
プールに入ると、隣のコースに、すでに人影があった。
あの肩の形、背中のライン。
すぐにわかった。

俺たちは何も言わなかった。
ゴーグルを装着し、泳ぎ始めた。
ただ、水の中で、互いの視線が絡み合う。

三十分後。
端で止まったとき、
コースロープが、再び静かに動いた。

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