ネットの書き込みを鵜呑みにしてアナニーを覚えた結果、もう戻れなくなった話

「男もドライでイケる」——深夜にたまたま見た掲示板の書き込みを、俺は鼻で笑った。女が好きな普通の大学生の俺には関係ない話だと思っていた。なのに、なぜか頭から離れない。確かめるだけ、一回だけ。そう言い訳して指を入れたあの夜から、俺の体は、自分の指で、道具で、少しずつメスみたいに作り替えられていった。

ネットの書き込みを鵜呑みにしてアナニーを覚えた結果、もう戻れなくなった話

その書き込みを見たのは、本当にただの偶然だった。

俺——リク(22歳・仮名)は、地方から出てきて都内の私大に通う4年生だ。就活も終わって、卒論までは暇な時間ばかり。彼女はいないけど、別に焦ってはいない。高校の頃から普通に女子と付き合ってきたし、エロ動画だって当然のように女のやつを見る。男に興味なんて、これっぽっちもなかった。

その夜も、いつものように一人でベッドに寝転んで、スマホでだらだらと掲示板を眺めていた。

『男も後ろでイケるって本当?』

そんなスレッドのタイトルが、ふと目に留まった。

なんとなく開いてみると、そこには知らない世界が広がっていた。前立腺がどうとか、ドライオーガズムがどうとか。「女のセックスとは比べ物にならない」「一度知ったら戻れない」「チンポに触らなくても、奥だけでメスみたいにイケる」——そんな大げさな書き込みが、びっしりと並んでいる。

俺は鼻で笑った。

(バカじゃねえの。男が尻でイクとか、気持ち悪い)

そう思って、スマホを閉じた。閉じた、はずだった。

それなのに、その夜、なかなか寝付けなかった。天井を見上げていると、あの書き込みの文字が、なぜか頭の中をぐるぐる回っている。チンポに触らなくてもイける、という一文が、やけに引っかかって離れない。

(……いや、ありえないだろ)

打ち消しても打ち消しても、消えない。 気づけば俺は、布団の中で、もう一度スマホを開いていた。そして、明け方近くまで、その書き込みを何度も読み返していた。


最初に断っておくと、俺は「試してみたい」と思ったわけじゃない。

ただ、確かめたかっただけだ。あんな書き込みが嘘っぱちだってことを、自分の体で証明してやろうと思った。気持ちよくなんかなるわけがない。痛いだけに決まってる。一回やってみて、「ほら、やっぱりただの排泄器官じゃねえか」って結論を出せば、それで気が済む。

そう自分に言い聞かせて、俺は風呂場に向かった。

潤滑剤なんて気の利いたものは、当然うちにはない。仕方なく、洗面台にあったボディソープを手に取った。たっぷり泡立てて、シャワーの温水で股間を流しながら、おそるおそる、後ろに指を伸ばす。

冷たいタイルに片足をかけて、中腰になる。自分の指が、自分の尻の狭間をなぞる感触。 それだけで、ぞわっと鳥肌が立った。気持ちいいからじゃない。怖いからだ。

窄まりの周りを、ぬるついた指でくるくると撫でる。ぎゅっと固く閉じたそこは、何度なぞっても、頑なに口を閉ざしたままだった。

(……無理だろ、これ)

ボディソープのぬめりを頼りに、指先にぐっと力を込める。第一関節が、めりっ、と沈み込んだ瞬間——

「っ、痛ぇ……」

声が漏れた。痛いというより、熱い。引きつるような違和感が、内側から込み上げてくる。腹の奥が重くなって、まるで便意のような、なんとも言えない圧迫感。括約筋が、異物を押し出そうと、きゅうきゅうと指を締めつけてくる。

(やっぱりだ。気持ちよくなんてならねえ。ただ痛いだけじゃねえか)

ほら見ろ、と俺は心の中で勝ち誇った。あんな書き込み、全部嘘だ。こんなの、苦痛以外の何物でもない。

そう思って、指を抜こうとした、そのときだった。

抜く拍子に、指の腹が、内側のある一点を擦った。

「——っ!?」

電気が走った。

背筋を、何か得体の知れないものが駆け上がっていった。ビリッ、とした痺れが、腰から脳天まで突き抜ける。膝ががくがくと震えて、思わずタイルに手をついて、俺はその場にしゃがみ込んでしまった。

心臓がばくばくいっている。下を見ると、さっきまで完全に萎えていたはずの俺のものが、ぴくり、と頭をもたげかけていた。

(……今の、なんだ? なんで……勃ちかけてんだ、俺)

怖かった。心の底から、怖かった。 自分の体に、自分の知らないスイッチがあった。その事実が、何よりも怖かった。

俺はすぐにシャワーを止めて、体を拭いて、ベッドに逃げ込んだ。 布団を頭からかぶって、目を閉じる。

(忘れろ。今のは気のせいだ。何もなかった)

でも、その夜の俺は、自分の指の感触を、いつまでも忘れられなかった。布団の中で、何度も寝返りを打った。あの痺れの残像が、腰の奥に、しつこくこびりついて離れない。


それから三日間、俺は普通に過ごした。

大学に行って、友達と飯を食って、就活終わりの同期と飲んで、女の子の店員が可愛いとか、くだらない話で盛り上がった。俺は普通だ。あんなのは、ただの好奇心の事故だ。

そう思っていたのに——夜になって一人になると、決まって、あの感覚が蘇ってくる。

四日目の夜、俺はまた風呂場にいた。

今度は、ボディソープじゃなくて、コンビニで買ってきたハンドクリームを使った。あの時より、ずっとぬるぬると滑る。「乾燥がひどくて」なんて、レジで誰にも聞かれてもいない言い訳を頭の中で用意していた自分が、情けなかった。

(一回だけ。本当にあれが気持ちよかったのか、確かめるだけだ)

また同じ言い訳。でも、もう自分でも、それが嘘だってわかっていた。

クリームを指にたっぷりとまとわせて、窄まりに塗り込む。ひんやりとしたそれが、体温で溶けていく。今夜は、最初から逃げないと決めていた。

二度目は、一度目より、ずっとスムーズに指が入った。くち、と小さな水音を立てて、第一関節、第二関節と、ゆっくり沈んでいく。さすがに違和感はある。圧迫感も、異物感もある。でも、もう、痛みじゃなかった。

あの一点を探して、俺は慎重に、指を内側の腹側へと折り曲げていく。

「……あ」

コリッ、と、指先が、何かに触れた。

その瞬間、また腰が跳ねた。 今度は、逃げなかった。怖さよりも、確かめたいという気持ちが勝っていた。

コリッとした、奥の突起。栗の実みたいな、固いしこり。そこを、指の腹で、そっと、円を描くように押す。

「……ん」

じわ、と。 腰の芯のあたりに、ほんのりとした、温かいような、むず痒いような感覚が灯った。

正直、拍子抜けした。 あの掲示板に書いてあった「女のセックスとは比べ物にならない」とか「メスみたいにイける」とか、そんな大それたものじゃない。気持ちいいというより、なんだか、こそばゆい。トイレを我慢しているときの、あの妙にむずむずする感じに、ちょっと甘いものが混ざったような——そんな、曖昧で、頼りない感覚だった。

「……なんだ、こんなもんか」

でも。 それでも俺は、すぐに指を抜けなかった。

しこりを、もう一度、押してみる。くにっ、と指が沈むたびに、さっきの「むず痒さ」が、じわじわと滲んでくる。痛くない。むしろ、嫌じゃない。何度か続けているうちに、ふと、思った。

(……あれ。これ、ちょっと、気持ちいいかも?)

確信なんて、まるでない。気のせいかもしれない。 でも、その「かもしれない」が、妙に頭に残った。前を見ると、いつの間にか半分くらい勃ちかけている。射精したいような切迫感はない。ただ、体のどこか奥のほうが、ほんの少しだけ、温まっている。

俺は、しこりを軽く押したまま、しばらくその感覚を確かめていた。けど、結局その夜は、それ以上どうにもならなかった。波が来るわけでも、イけるわけでもない。ただ、ぼんやりとした熱が、腰の奥に居座っているだけ。

物足りなさと、ほんの少しの心残りを抱えて、俺は指を引き抜いた。くち、と小さな音がした。

シャワーを浴び直しながら、俺は天井を見上げた。

(……たいしたことなかったな)

そう結論づけて、終わりにするはずだった。 なのに、その夜も、布団の中で、あの「ちょっと気持ちいいかも」が、しつこく頭から離れなかった。あれは、本当に気のせいだったのか。それとも——ちゃんとやれば、もっと、なるのか。

確かめたい。 その気持ちだけが、また、芽を出していた。


そこからは、ゆっくりと、坂を下りていくようだった。

一気に、じゃない。本当に、少しずつだった。

最初は週に一回くらい。「確かめるだけ」の延長で、風呂場で指を入れて、あのしこりを探す。最初の数回は、相変わらず「ちょっと気持ちいいかも」止まりだった。むず痒い熱が腰に灯るだけで、それ以上はどこにも行けない。正直、何がそんなにいいのか、まだ半信半疑だった。

でも、回を重ねるごとに、確実に、何かが変わっていった。

たぶん、五回目か、六回目あたり。 いつものようにしこりを撫でていたら、ふいに、ぞくっ、と腰が震えた。むず痒さの中に、初めて、はっきりとした「快感」と呼べるものが混じった瞬間だった。

「……っ、今の」

驚いて手を止める。心臓が、とくとくと速くなっている。気のせいなんかじゃない。さっきの、あれは。

それからは、押し方が、少しずつ分かってきた。 強く押しすぎると、ただの圧迫感になる。軽すぎると、何も来ない。指の腹で、しこりの「際」を、優しく、こするように撫でる——その絶妙な力加減を見つけたとき、腰の奥から、じんわりと甘い痺れが立ち上ってくる。

回数を重ねるたびに、体が、その快感を「覚えて」いくのが分かった。 最初は十分かけても薄ぼんやりとしか感じなかったのが、二週間も経つ頃には、触り始めて数分で、はっきりと熱が灯るようになった。前を触ってもいないのに、勃つようになった。先っぽから、透明な汁が滲むようになった。

体が、開発されていく。 その言葉の意味を、俺は、自分の体で、思い知っていった。

週一が、三日に一回になった。それが、二日に一回になり——気づけば、毎晩、風呂場に籠もるようになっていた。指を入れて、あのしこりを擦る。それが、寝る前の、やめられない儀式になっていた。

そして、開発を始めて、たぶん一か月近く経った、ある夜のことだった。

その日は、いつもより、調子がよかった。 指の腹でしこりを転がしていると、甘い痺れが、これまでにないくらい、深く、大きくなっていく。腰がびくびくと跳ねて、垂れた先走りが、内ももを伝って、タイルにぽたぽたと落ちていく。

「ぁ……っ、く……あ、なんか、これ、やば……っ」

声が、勝手に出る。自分の声とは思えない、上ずった、甘ったるい声。

下腹の奥で、何かが、ぐぐっと膨れ上がってくる。これまで何度も、あと少しのところで届かなかった、あの「波」。それが今夜は、寄せては返しながら、確実に、大きくなっていく。

「あ、あ……来る、なんか、来る……っ!」

その波が——ついに、決壊した。

「——っ、ぁああっ……!」

チンポには一切触れていない。それなのに、俺のものは、びくん、びくんと激しく脈打って、先端から、とろとろと薄い蜜を吹きこぼした。腰から下が、自分の意思とは無関係に、痙攣するように震え続ける。

頭の中が、真っ白になった。

その夜、俺は初めて、後ろだけで——男が、メスみたいに、イってしまった。

一か月。 あの「ちょっと気持ちいいかも」から、ここまで来るのに、一か月かかった。逆に言えば、一か月、毎晩こつこつと、自分で自分の体を作り替えた結果が、これだった。

終わったあと、俺は、しばらく立ち上がれなかった。 タイルにへたり込んで、荒い息をついている。シャワーの温水が、ずっと背中を叩いている。

ヒリヒリと痛む後ろの感触と、まだ収まらない、心臓の早鐘。 指を、そっと引き抜く。くぽっ、という、間抜けで、いやらしい音がした。

そして、頭の片隅で響く声。

(……もう、戻れないかもしれない)

その予感だけが、やけに鮮明だった。


一度、後ろでイく感覚を覚えてしまうと、もう、止まらなかった。

毎晩の儀式は、続いた。けど、指でイけるようになると、今度は、それじゃ物足りなくなった。

ドライオーガズムは、すごい。すごいけど——届かない。 指の長さじゃ、奥の奥には、どうしても届かない。イっても、イっても、その先に、まだ「もっと深いところ」があるのが、感覚で分かってしまう。一度知った快感は、いつだって、その一つ上を欲しがる。

もっと奥。もっと太いもの。もっと、深いところを抉ってほしい。 そう思い始めた自分に、最初は吐き気がするほどゾッとした。けど、その欲求は、日に日に、止めようもなく膨らんでいった。

ある夜、俺は、震える手でスマホを操作していた。 通販サイトの、見てはいけないようなページ。男が、後ろで使うための、道具。

何度もカートに入れては消し、入れては消しを繰り返して、結局——俺は、注文ボタンを押した。一番安い、シンプルなやつを、それでも見つからないように、別の生活用品と一緒に。

数日後、無機質なダンボール箱が、宅配便で届いた。 箱を開けるとき、手が震えた。こんなもの買って、俺は一体何をやってるんだ、と。

でも、その夜には、もう使っていた。

風呂場で、ローション代わりのジェルをたっぷり塗り込んで、その冷たくて硬いものを、窄まりにあてがう。深呼吸をして、ゆっくりと、腰を落としていく。

「……っ、ぁ、く……ぁああ……っ」

指とは比べ物にならない質量。みちみちと、内側を押し広げられていく、強烈な圧迫感。腹の奥が、ずん、と重くなる。一瞬、漏らしてしまうんじゃないかという恐怖が走る。

それでも——奥まで呑み込んだそれが、あのしこりを、ぐっ、と内側から押し上げた瞬間、

「ひっ……ぁ、ああっ、それ……!」

目の前が、ちかちかと白く爆ぜた。

俺は、自分でそれを動かし始めた。出し入れするたびに、ぐちゅ、ぬちゅ、と、淫らな水音が、風呂場のタイルに反響する。前立腺を抉られるたびに、声が止まらない。

「あ、あ、あっ、すげ……これ、すげぇ……っ、おかしくなる……!」

垂れ流しの先走りで、足元はもうぐしょぐしょだった。 チンポをしごく余裕もない。ただ、後ろを犯される快感だけで、俺はまた、何度も、達しかけては寸前で堕ちていった。

イっても、イっても、満たされない。 むしろ、知れば知るほど、渇いていく。

最後にもう一度、奥を強く突き上げたとき、俺は、声にならない悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちた。 全身が、汗とジェルと、自分の蜜で、べとべとに濡れていた。

道具を引き抜くと、ぽっかりと口を開けたそこが、物欲しげに、ヒクヒクと収縮しているのが、自分でもわかった。

(……気持ち悪い。最低だ、俺)

そう思いながら、俺は、明日も、これをやめられないことを、確信していた。


体は、確実に変わっていった。

最初はあんなに固く閉じていたそこが、今では自分の指を二本でも、何の抵抗もなく呑み込む。それどころか、ふとした瞬間——電車の揺れや、椅子に座り直したときに、勝手に疼くようになった。後ろが、いつも、何かを欲しがっている。

ある日の昼間、大学の図書館で卒論を書いていたときだ。 椅子に座っていると、じわりと、後ろが熱を持ってきた。空っぽのそこが、きゅう、と切なく収縮する。昨日突き上げられた感覚を、体が、勝手に思い出している。

(……やめろ。こんなところで)

俺は太ももをぎゅっと閉じて、必死で気を逸らした。 パソコンの画面を睨みつけながら、心臓だけがうるさく鳴っている。少し身じろぎするだけで、ズボンの中で、半勃ちになってしまっている自分が、情けなくて、怖かった。

俺は、普通の大学生だ。女が好きで、彼女だっていた。 それなのに、自分の体が、自分のものじゃなくなっていく。

怖くて、たまらなかった。 でも——その怖さの奥に、確かに「もっと」を求める自分がいることも、もう、認めるしかなかった。

道具では、届かない場所がある。 それに気づいてしまったのが、決定的だった。

硬くて冷たいプラスチックじゃ、どうしても満たされない。 あれには、体温がない。脈動がない。 俺の奥が、本当に欲しがっているのは——生身の、熱くて、どくどくと脈打つ、他人の。それも、男の。

そこまで考えて、俺はぞっとして、頭を振った。

(ありえない。男となんて、絶対にありえない)

口ではそう言いながら。 その夜も、俺は、道具を奥まで咥え込んで、見たこともない男に犯される妄想で、後ろをぐずぐずに濡らしてイっていた。


その夜、俺はベッドの上で、長いことスマホを握りしめていた。

画面には、アプリストアの検索結果が表示されている。男同士の、出会いのための、アプリ。 何度も、消そうとした。何度も、画面を閉じた。

でも、指は、勝手に動いていた。

『インストール』

ボタンを押す瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられた。 あの夜、掲示板を閉じたはずなのに、もう一度開いてしまった、あの時とまったく同じ感覚。

ダウンロードのバーが、少しずつ伸びていく。 それを見つめながら、俺は、半年前の自分には絶対に信じられないことを考えていた。

(一回だけ。本当に、男に入れられたら気持ちいいのか、確かめるだけだ)

——また、同じ言い訳だ。

俺はもう、知っている。 その「一回だけ」が、どこにも辿り着かないことを。最初の指が、道具になり、道具が、これから生身の男になる。その先に、引き返せる場所なんて、もう、ない。

天井を見上げる。 あの最初の夜と、同じ天井。 でも、見上げている俺は、もう、あの夜の俺じゃない。

プロフィールを登録して、震える指で、メッセージを送る。 『初めてです。優しい人、探してます』

送信した瞬間、俺の体の奥は——もう、明日抱かれることを期待して、静かに、はしたなく、疼き始めていた。

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